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アカデミー論3

NADAL Rafael ESP [2] def SCHWARTZMAN Diego ARG [12]
6-3 6-3 7-6(0) Semi Final
ROLAND-GARROS 2020
09 Oct. 2020
PARIS FRANCE
Photographer / MANO,Hiromasa
MANNYS PHOTOGRAPHY of Tokyo
mannys@mannysjp.com

一時期明らかに衰えが見られ、いよいよここまでか… と思われたラファ。Facebookには書きましたが、13歳の時の試合を見て感動し、全く勝ってもいないのにインタビューし、テニスマガジンの記事に書いて、編集部もそのまま掲載してくれたころが本当に懐かしいです。
下の写真はFacebookと違うやつで。

彼は当時スペイン国内でそこそこの実績でしたがヨーロッパ内では同級生の天才ガスクエにダンゴで負けていたくらい。

さて、彼の真似をする選手がよく使うジグザグダッシュ。あれってどんな意味があるか知っていますか?。

彼のこれくらいのジュニア時代を知っている選手であれば理解できます。そう、何度か書いてますけど彼、非常に足の遅い選手だったんですね。ヨロヨロ。
ジュニア時代を見ていればあの二人の叔父さんからどれだけ鍛えられたのかは想像できますが、あのダッシュを何万回も繰り返し繰り返し、この年までも世界に誇るフットワークを身につけたんでしょうね。それが今でも癖として残っていることは素晴らしい。

彼の叔父さんの育成に関しては以前も書いていますが、ITF 云々につながります。

ITF の話を色々しました。国内ではなく、世界を… と考えるのであればこれを中心に考える必要があります…
… がしかし、そうなんですよ、実はここが大きな落とし穴でITFは所詮ITFジュニア。本当のプロの世界とは全く違う世界なんですね。「目安」として使うことができますが、これを目標にしてしまうと本当のプロへの道は遠ざかるんです。

よくWOWOWでグランドスラムジュニアで活躍する日本選手を取り上げられていると思いますが(僕は残念ながら見ておりませんけど)、そのままシニアに上がる子はほとんどいない。つまり、グランドスラムジュニアに出場すること自体は、前回書いたようにお金を使って世界中を回ってそこそこの実力があればやれないことはないことであり、ATPやWTAで100位に入ることとは全く別次元のことであるということ。

例えば女子。もう15歳も過ぎればプロを目指す子は… というか既にプロ大会で賞金とポイントをもらっており、そのままプロとして登っていきます。つまり、ITF に残っているのは第2グループであり、その中でそこそこ勝ててもプロ世界を回っているトップグループの同級生に勝てるのか?、ということ。
まあ、民族や国、家庭、エージェントの関係でジュニア大会に少し出なければならいしがらみがある強い選手もいますけど。

男子は体の成長も遅いしスピード体力あまりに違いすぎるので ITFを徐々に登っていくのが正統派でしょうが、このラファもITFにはほとんど出ていないし、グランドスラムジュニアには全く勝てそうにないウインブルドンに16歳時出てすぐ負け。他の才能ある選手もプロ大会を優先してジュニア大会を敬遠しますから、女子ほどではないにしろITFのレベルも世界トップが集まっているわけでもない。つまり、ITFでそこそこ勝ってもプロ世界で通用する保証など何もない、ということ。

要するに、ITFジュニアというものは非常に重要です。世界への入り口であり、将来どのレベルに行けるのかの目安となりますので。
しかし、本当にプロを目指す選手、つまりITFで勝ち抜く選手にはあまり重要ではありません。特に女子。ウインブルドンジュニアで優勝など目指していてもダメだということです。

ラファが16歳の時、偶然ドイツのインドアで行われているフューチャーズ大会で会いました。
チョッパヤのカーペットだったんですが、わざわざそれを選び、予選からどうにか決勝まで進出。
ウインブルドンジュニアの話もそうですが、彼の叔父さんたちは彼が一番苦手としている条件を次々に用意し、言い換えればどうにか勝てないように、勝てないように、大会を選び、育成していた気がします。クレーならもっとどんどん結果も出たでしょうし、フレンチジュニアなら簡単に優勝したでしょうが、目の前の小さな栄光は捨て去るつもりだったんでしょう。テニス王国の余裕と言えるかもしれません。

日本のジュニア育成の実力は非常に低く、目の前の全日本ジュニア、ITFポイント、グランドスラムジュニアにすぐ飛びついてしまいますが、もしもトップを目指すのであれば日頃の練習を含め、最終的な目標を失わずに道を選び、邪念を捨てて親子共々、師弟共々努力しなければなりません。

続く

下は「テニス選手になりたいんだけどね… 」とカタルーニア語で語っていたラファエル少年。



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